井野:映像のコンセプト、全体の構成、音楽、撮影技術や編集方法などどの面を取ってもバランスよくできているというのが印象です。 中でもタイトルのAM6、リノベーションという概念を暮らしを見直す時に日常の中にある誰もに平等にやって来る朝の何気ない時間に焦点を当てたことが自分にとっては心地よく感じました。 誰にでも訪れているはずの『朝』。その時間を、誰とどう過ごすのか。 ありふれた日常の時間の過ごし方を考え直すこと自体がリノベーションの根本の概念なのではないかと思わせてくれるようなお手本のような映像でした。明日もいい朝が皆さんにやってきますように。
水野:「おしゃべりで明日を変えようプロジェクト」という、リノベーションとは一見関係ないテーマなのですが、建物や空間をおしゃれにすればよい、というわけではなく、その本質はコミュニケーションなのではないか、というリノベーションに対する批評性が作品の意図だったのだと推察します。表現は拙い、というか上手に伝えられていなかったと思うのですが、「何かを伝えたい」というグツグツした気持ちは伝わってきました(笑)。まだ学生ということもあり、伸びしろも評価させていただき、審査員特別賞とさせていただきました。
斎藤:本年のリノベーション動画コンテストは2回目の開催ということで、まだまだ発展途上ですが昨年にも増して様々なアイディアやプロジェクトを出していただけました。映像の力というのは説明すること無く人に伝えることが出来、事象やイベント等もそれがどのような”リノベーション”であったかを伝えるには最適なメディアだと思います。様々な街づくりやアイディアシフトが行われる時代にある今、様々な出来事を是非映像で収め自分たちのプロモーション・ソーシャルインパクトも含め活用するのが当たり前になり、今後も様々な作品やプロジェクトが参画することの出来るコンテストになることを強く望みます。
井野:リノベーション、という言葉が浸透しているように思える時代になりましたが、このコンテストが投げかけているテーマに建築や不動産業界だけではなく広く一般の方々も興味を持ち始めているのではないかと感じています。学生から、フリーランス、そして映像のプロフェッショナルまで、2回目を迎えた今回の審査を経てその広がりを実感することができました。在宅ワーカーやフリーンランスが1000万人を超える勢いで増えている現代にあって、住まう場所、暮らす場所そのものを再定義する時代にきているのではないか。そのヒントというのか、その変遷のプロセスを記録したり、垣間見たりすることができるのがこのコンテストに関わる皆さんの意義になり得るのではないかと感じ、さらなる広がりを期待しながら応募していただいた皆さんにより良い暮らしを想像し空間や映像といった形にしていく同時代の仲間として励みの一つとなればと願っています。とても楽しい時間でした、ありがとうございました。
水野:受賞者のみなさま、おめでとうございます。私は映像やクリエイティブの専門家ではないので、映像のクオリティよりも、作品のコンセプトやストーリー、リノベーションという概念をどこまで拡張できているか、つまり、リノベーションとは建物や空間に限らないものである、というメッセージが上手く伝達できているかという点を重視して審査させていただきました。とはいえ、リノベーションというとまだまだ建築や空間のイメージが強く、建物・空間に関連する作品が多かったわけですが、そこから一歩ズラしたコンセプトやストーリーがある作品が高く評価されたと思います。来年もより「リノベーション」という概念を拡張していく志向を持った作品が多く集まることを願っています。
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斎藤:近代の街づくりは、新しいものを作るばかりでそのことばかりを考えてきました。棟下式のアイディアは、それ自体を覆すもので、どの様に建築や施設が終わりを迎えるべきか、その場所に対してどのよに感謝を示すか等今まであまり気づかなかった「終わり方」を示す素晴らしい作品だと思い評価しました。