コラム
前話までにいくつかのリノベーション会社を訪れたBuuちゃん。リノベーションEXPO in 東京 2018にも足を運び、いろんな情報とともに「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」というアワードがあることを知った模様です・・・。
このお話の登場人物
Buuちゃん
好奇心旺盛で議論好きな性格。「いつかはリノベ!」と考えているが、知識はまだあまりない。吉祥寺の実家で両親と同居中。
man giorno(マンジョルノ)さん
バーに度々出没する謎の紳士。
(Buuちゃん、Barカウンターでひとり佇む。そこに赤いジャケットを着たルパン三世風の紳士が。)
<おとなり、失礼してよろしいですか?(ニッコリ)
<どうぞ。あら、タダモノではないダンディズム・・・。
<これはどうも、はじめまして。赤毛が素敵ですね(キラリ)。ところでスマホで何を熱心にご覧になっているんですか?
<リノベーション・オブ・ザ・イヤーの投票よ。どのお家に「いいね」しようか悩んでるんですけど・・・。
リノベーション・オブ・ザ・イヤー2018 エントリー一覧
<ほう、リノベーションにご興味がおありなんですね。
<ええ。実家をリノベしようと思ってちょっと前に調べ始めたばかりだけど・・・。リノベーションEXPO2018にも行ってブース巡りして会社さんにも相談したのよ。
[編注] リノベーションEXPO2018出展ブースについては[archive]「ご相談コーナー」全18のブースをご覧下さい。
<リノベーション・オブ・ザ・イヤーはですね、リノベ業界のカー・オブ・ザ・イヤーやアカデミー賞みたいなもの。リノベーションの事例が目立っていくことで、一般の人が住まいを考える時に、リノベーションという選択肢があることを知ってもらえるようにと考えられたプロモーションの一環なんですよ。
<どのお家も個性的で楽しそう。なんだか見た目だけで選ぶのはもったいない気がするんです・・・。
<でも、リノベに興味がある一般のお客さまが見たいように見せられているでしょ?
<いままでの住宅のアワードは、建築の専門家が小難しいことを言っていて消費者不在だったという・・・。その点このアワードは、まず一般の人の「いいね」で予選をして、最終審査をするのもライフスタイル誌の編集長たちだったりして親しみが沸くわー。
<そうです。住宅系のメディアであっても、専門家向けというよりも一般のお客さまを読者ターゲットにしているところが選ばれていますね。
<審査対象も「500万円未満」とか価格帯別なのも消費者目線よね。住宅マッチングサイトSUVACOさんも、相談に来たお客さまに訊くのはまず予算と言ってた。
[編注] 【第三話】Buuちゃん旅に出る – [EXPOご相談コーナーでどこ回る??]でSUVACOさんに話を聞いています。
<皆さんは住まいを探すとき、今の時代まずネットで検索します。そして、いかに素敵な写真と素敵なストーリーがあり、共感できるかが選ぶ基準になっています。それがSNSで拡散する。そういった実体に対応した建て付けなんです。
<作品をエントリーしたリノベーション会社さんは、社員総出で「いいね」したらそれなりの数は行くでしょうし、社員も自分の会社の作品がいいと思えば進んでシェアするものよね。
<おっしゃるとおりで、社員自らが消費者がどう動いているかを知ることにもなるんです。
<キレイな写真と物語を、考え抜かれたコピーとともに・・・。リノベーション会社それぞれが、自身のブランドをプロモーションする力を養うという趣旨もあるというワケね。
<何でもご存じなのね。アナタ、只者じゃないわ・・・。 それじゃあね、ひとつお聞きしたいことがあるの。「無差別級」ってあるでしょ。これは何をどうやって審査しているのかしら? あたしたち一般住宅を探す庶民からするとかけ離れたプロジェクトが多いし、予算別にするというさっきの説明とも矛盾する気がするんですけど・・・。
2017年総合グランプリ「扇状のモダニズム建築、桜川のランドマークへ」
<「無差別級」は”住宅”という縛りもないですからね。でも、この部門はこれからもなくならないでしょう。なぜなら、リノベーションのフロンティア、最先端が毎年ココに出てくるからです。
<ああ、そもそも審査会も想定してなかったものの受け皿としてあるのね! 敢えて価格もカテゴリーもごちゃまぜな中からトレンド、そして文字通りイノベーションを見いだす、と。さらにほかの価格帯別の最優秀作品と全体での「グランプリ」を決めなくちゃいけないのね!
<そうです。「無差別級」も含めて、その年の最もエポックメーキングな作品が「グランプリ」を制するのです。
<かといって、常にジャンル横断的で社会的なメッセージが強いものばかりじゃなくて、2016年リノベーション・オブ・ザ・イヤー総合グランプリ、タムタムデザインのアーケードハウスのように住宅があったりする。大がかりなものしか取れないわけでもないのね。
[編注] 【REPORT】リノベの社会性やまちづくり視点[タムタムデザイン田村晟一朗さんが登壇]
<2015年リノベーション・オブ・ザ・イヤー総合グランプリ、ブルースタジオの「ホシノタニ団地」は、他の作品に比べてスケールもクォリティも凄すぎたので、これを選ぶと来年以降誰もエントリーしてくれないのではないかという意見があったのは事実です。でも、そこで手加減することは意味がないと授賞に踏み切りました。
<結局そのあとホシノタニ団地はグッドデザイン金賞を取った・・・。
<一方のアーケードハウスは、800万円以上部門という価格別にありながら、商店街の一店舗を住宅に変えていくのはアリかも、と思わせる説得力がありました。
<公共性、社会性、エコが要件かとおもったら、思いっきり原点回帰したという・・・。そうすると、もっともエポックメーキングなものを提示できるか、今年ならではの争点を提起できるかが受賞のカギなわけね。
<そうです。エントリーされる作品は、リノベーション事業者の皆さんとお施主さんが一生懸命創った住まいや場所です。作品Aと作品Bを並べて、優劣を付けることなんてできないんです。エントリーされたものをみて“こっち”を選ぶということは、作品の優劣を選んだのではなくて、今年の争点を選んだに過ぎない。
<事前に想定した切り口でエントリーしても、それがその年のその場所・その住人にとって「リノベーション」的な意義を発揮していなければならない、と。狙って取れるものじゃないワね・・・。
<建築的あるいは不動産的なモノサシがあって、そのスペックを争っているのではないんです。あとで振り返ったときに「今の流れはあれがきっかけだったね」と言えるようにしたい。だから基本的に、“争点”をプレゼンテーションしていないものは選ばれにくいんです。
<いまHPで受賞履歴を一覧で見られるけど、年々ものすごく進化しているものね。写真もキャッチも記者がそのまま記事にできるようなクォリティだし。
<オブ・ザ・イヤーをはじめてまだ5年です。最初は授賞式も小さなカフェのレンタルスペースでした。でも、この間に世の中でリノベーションがすごく広まった感はあります。それでリノベーション業界全体の実力も底上げされたんですよ。
<だからリノベーション業界の横綱、大関を超えるものが出てくる。タムタムデザインのアーケードハウスはその象徴だったわけね。
<年々エントリー数も増えてレベルが上がっていますので、賞を獲るのはもちろんですが、1次審査を勝ち抜いて最終審査にノミネートされるだけでもたいへんです。ノミネートされた方々には胸を張ってタキシード姿・ドレス姿で授賞式会場のレッドカーペットを歩いてもらいたいですね。
<今年でまだ6年目というのが驚きだわ。
<10周年を迎える頃には、もっとまとまり感と流れが出てくる。そうしたらもっと幅を広げてさまざまな業界の人を巻き込んだお祭りにしたいです。
<そうするとまた見方が俄然変わってくるわね! 意外な伏兵に期待して、私もどれが大賞を取るか想像しながら「いいね」しよーっと。
<あの、投票期間、もう終わってますけど・・・。
<えっっ・・・。