TOKYO

TOKYO

【第八話】Buuちゃんはバーにいる2 – [アノ人がリノベに熱くなったワケ。]

コラム

前回までのあらすじ

たまたま入ったバーで、謎の紳士、マンジョルノさんに出会ったBuuちゃん。
「リノベーション・オブ・ザ・イヤーの魅力を事細かに教えてくれたあの御方はいったい・・・」
深まる謎に掻き立てられる興味。「ひょっとしてこれって、恋・・・? 」
と、自分でもわからないドキドキを胸に、またバーの扉を開くのであった。
 
 
 
このお話の登場人物

Buuちゃん
好奇心旺盛で議論好きな性格。「いつかはリノベ!」と考えているが、知識はまだあまりない。吉祥寺の実家で両親と同居中。
 

man giorno(マンジョルノ)さん
バーに度々出没する謎の紳士。その素顔とは・・・??
 

一種の「使命感」。

『チリンチリーン』
 
 

<これはどうも。またお会いしましたね。
 
 
 
 
 
 

<あらっ、先日はどうもありがとうございました。審査結果がいよいよというので楽しみにしていますのよ。それにしてもアナタ、「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」についてよくご存じで。もしかして関係者?
 
 
 
 
 

<ええ実は。世を忍ぶ仮の姿は住宅総合研究所の所長なんです。
 
 
 
 
 
 

<やっぱりねえ。それにしてもマンジョルノさんは、どうしてリノベ業界に熱心に関わるようになったのかしら?
 
 
 
 
 

<リノベーションに関わるようになったのは、前職のリクルートで住宅総研(現・リクルート住まい研究所)に人事異動になってからですね。2008年に、中古住宅の流通活性化をどうするか?というテーマに取り組むことになったのですが、もともと住宅に関して素人だった私はあちらこちらに話を聞いて回り、「既存住宅の流通活性化プロジェクト」というリポートを書いたんです。
 
 
 
 
 
 

<そこで詳しく知って虜になったのね。
 
 
 
 
 

<そうです。まず住宅市場のほとんどが中古住宅の流通で占められているアメリカに視察に行ったんですが、その時の印象をひとことでいうと、古い中古住宅がとにかく素敵だった。それが一体どういうからくりかを調べたら、「リノベーション」だったんです。
 
 
 
 
 

<それで日本でもリノベした方がいいじゃん!って思ったのね。
 
 
 
 
 

<新築至上主義の日本では、高価な割には築年数を重ねるとともに住宅の市場価値がどんどん落ちて行く。逆に、中古がそんなに安くなってしまうのなら、それを安く購入してリノベすればいい。自分にとって大事なところに手間とお金を掛けることで、新築住宅より個性的で素敵な住まいが作れる。不動産業と建築業が融合することで中古住宅とリノベーションをセットにして、流通を活性化できるのではないか、というリポートを書いたワケです。
 
 
 
 
 
 

<当時いち早くリノベーション事業に参入していた事業者は、不動産業者、建築事務所、デベロッパー、工務店やリフォーム業者など業態に違いはあるものの、共通した問題意識を持っていたのね。
[編注]このあたりのいきさつはSTOCK & RENOVATION 2014に詳しい。
 
 
 
 
 

<そうなんです。でも業界が違うのでお互い交流がなかった。だからリノベーションの定義もなければ、品質基準もバラバラだった。みんなでバラバラにやるよりも連帯して、きちんと情報発信していかなければと考えました。
そのために、「リノベーション住宅推進協議会(現・リノベーション協議会)」を立上げました。各事業者がデザインや品質などで個性を出しつつ競争するのはいいんですが、「リノベーション」の共通した定義も定めないとポータルサイトでも取り上げられないし、物件の品質がバラバラだと市場の信頼も得られないと考えたのです。
 
 
 
 
 
 

<日本人の住まい方の選択肢として定着すべきだと思ったのね。
 
 
 
 
 

<極端にいえば、ストックが足りなくなった分だけ新築で補充するような社会になればとすら思っています。
 
 

「あのときのぼくに、この選択肢があれば。」


<使命感でやってきたということね。でも、仕事だからってこんなに情熱的に動けるとは限らないわ。よっぽど好きでないと。
 
 
 
 
 
 

<そうですね・・・個人的な動機があるとすれば、以前自分で家を建てたあのときに、今のような『リノベ』という選択肢を知っていればよかったのに、という想いが強いからですかね。
 
 
 
 
 
 

<じゃあ、いまのお住まいは新築なのね。
 
 
 
 
 

<そうなんです。あの頃のぼくには注文住宅しか選択肢がなかった。もちろん、戸建てもマンションも、中古か新築にこだわらずあれこれ見て回ったんですが、新築マンションは空間としてどこも一緒だし、全然いいとは思えなかったんです。建売の戸建て住宅を内覧したときは、化学物質で目が痛かったし・・・。とは言え、中古にもまったく心惹かれなかった。
 
 
 
 
 
 

<一生にそんなにない買い物だし、別の選択肢があることを知ってもらいたいわけね。
 
 
 
 

<あのときの自分にこの選択肢があったら、あの候補だった中古マンションをリノベしたほうが断然良かったな、とか。最終的に新築を選ぶとしても、リノベーションという選択肢があることを知ったうえで選びたかった。
 
 
 
 
 
 

<こんな選択肢があったら、ぜったいこっちの道を選んでたと。
 
 
 
 
 

<それはそうかも知れません。いま住んでいる戸建の家を建てるときも、床をどうしますか?と訊かれて昔の小学校の床みたいにしてくれとか言いましたしね。壁はヤニで煤けた漆喰みたいな感じがいいとか・・・。どう考えても新築向きじゃない(笑)。
 
 
 
 
 
 

<施工する側の都合で選ばれた、扱いやすいのがウリのモノにすごく違和感があるワケね。人が五感の動物だとすれば、他人によって分析的に設計され造られたモノに素直に従うのは抵抗感があるわよね。
[編注]このあたりの感覚は、「Sensuous City[官能都市] ―身体で経験する都市;センシュアス・シティ・ランキング」に詳しい。
 
 
 
 
 

<アタシも長く吉祥寺に住んでるからよく分かるわ。でもいまや素敵なカフェや古本屋がどんどん減って、大手のチェーン店が目立ってきた。土日は客で溢れてゴミゴミの町だけど、たしかに交通の便や買い物を考えるといい町よ。隣の西荻窪や荻窪、阿佐ヶ谷、高円寺のほうが夜は楽しい(笑)。ところでいま流行の、キレイにリフォーム済みで販売される「マンション買取再販」はどうかしら?
 
 
 
 
 

<新築マンションそっくりで小奇麗だけど無個性な空間は、個人的にはあまり好きではないですね。でもそれですら、新築マンションにこだわっているよりも、よっぽどいい。少ないコストで済むし、環境にも優しいですから。よい立地で躯体さえしっかりしていれば、内装は後からどうにでも変えられるし。
 
 
 

これからのリノベーション


<「リノベーション協議会」も立ち上げ当初は104社だったのが、いまや約1000社にまで広がってきたのね。その要因はどこにあるのかしら?
 
 
 
 
 

<ひとつには、DIYでやろうとするひとたちが増えたこと。それから、伝道師と言われてきたリノベーション会社の正常進化があります。
 
 
 
 
 

<「リノベーション・オブ・ザ・イヤー」もそうだけど、近年、大手が沢山入ってきた印象があるわ。
 
 
 
 
 

<そうですね。大手デベロッパーによる“買取再販”が増えています。加えて、リノベーションに期待される仕事が、ただ住宅という枠に収まらなくなってきたことも大きいんです。
 
 
 
 
 
 

<リノベーションが、オフィスビルをホテルにとか、古民家をカフェにとか、いろんなタイプの建物に適用されるようになってきたということね。 
 
 
 
 

<リノベーションの守備範囲が広がってきたんです。プレーヤーの多様性とともに扱う建物の多様性が加わり、「既存ストックは使えるんだ」という認識も高まってきました。
 
 
 
 
 
 

<国は景気対策のために新築住宅を造らせているイメージがあるけど・・・。
 
 
 
 
 

<でも、現実には住宅が余っているわけですよ。
 
 
 
 
 
 

<そんな新築至上主義の流れを止められるとしたら・・・。
 
 
 
 
 

<ユーザーのニーズが変わるしかないでしょうね。
 
 
 
 
 
 

<このまえリノベーションEXPO東京に行ってみたら、若くて感度の高い人が沢山来てたわ。しかも女性が多かったとか。
 
 
 
 
 

<ありがたいことですよね。台風だったにもかかわらず足を運んで下さった方がたくさんいました。
 
 
 
 
 
 

<アタシがリノベーションを面白いと思ったのは、いろいろな社会問題の切り口になっていること。そして、リノベーションは単に見栄えを目的とするのではなく、使い勝手よく空間を活用するための解決手段だってこと。
 
 
 
 
 

<そして、空間の入手と活用の手立てが必ずしも新築である必要がなく、経済的で、しかも使いやすくカスタマイズできる。そして社会的にみても貢献しているということが重要なんです。
 
 
 
 
 
 

つづく。。。のか??

>BACK NUMBER

【第七話】Buuちゃんはバーにいる。 – [オブ・ザ・イヤーのヒミツ]

【第六話】Buuちゃんのお店訪問記 – [空間社]

【第五話】Buuちゃんのお店訪問記 – [オレンジハウス]

【第四話】Buuちゃんのお店訪問記 – [スタイル工房]

【第三話】Buuちゃん旅に出る – [マッチングサイトSUVACOで訊く]

【第二話】リノベがなんだか楽しげなワケ〜社会性、アート〜 ZoumoくんとBuuちゃん

【第一話】読めばリノベがまるわかり! ZoumoくんとBuuちゃん

一覧に戻る